論文「Hidden in Plain Signs」がNDSS 2027に採録されました
交通標識認識(TSR)は、運転支援や自動運転を支える安全上重要な機能として現代の自動車に広く搭載されています。一方で都市部では、標識にステッカーや落書きなどの装飾が施されていることが珍しくなく、こうした改変は日常的な光景として不審に思われにくいのが実情です。この共存関係は現実的な攻撃面を生み出します。従来のTSRに対する敵対的攻撃は、市販車両での検証がほとんど行われていない、高価で目立つ機材を必要とする、現実に起こりうる改変とはかけ離れている、対象とする標識の種類が限られる、といった課題を抱えていました。
本研究では、現実の都市で見られるステッカーのデザインを利用し、ニューラルネットワークに基づくTSRに誤認識や標識の消失を引き起こすブラックボックスの敵対的攻撃パイプラインを提案しました。対象標識上の感度の高い領域を特定し、あらかじめ用意したステッカー群から候補を選び、多様な走行条件を模擬する高精細なレンダリングエンジンの中で、最先端の代理検出器のアンサンブルを用いて配置を反復的に最適化します。2種類の学習データセットを用いて11種類の標識カテゴリを対象に評価し、TSRを搭載した市販車両5台による大規模な実走行実験で攻撃の有効性を検証しました。提案手法はこれらの車両に対して平均62%の誤検出を引き起こし、最先端のベースライン手法(19%)を大きく上回りました。さらに100名以上を対象とした知覚調査では、提案する改変が都市でよく見られる自然な装飾として受け止められることが示され、運用上の隠密性が確認されました。これらの結果は、敵対的サンプルが実験室の外でも成立し、実際の運転の安全に対して現実的かつ低コストな脅威となることを示しています。本成果はミラノ工科大学との国際共同研究によるもので、森が2024年にミラノ工科大学でサバティカルを過ごした際に着想を得たテーマです。2027年3月にソウルで開催されるNDSS 2027で発表されます。
【論文情報】
Luigi Bruzzese, Francesco Panebianco, Tatsuya Mori, Michele Carminati, Stefano Zanero, Stefano Longari, “Hidden in Plain Signs: Realistic Sticker Attacks on Production Traffic Sign Recognition Systems,” Proceedings of the Network and Distributed System Security Symposium (NDSS 2027), Seoul, Republic of Korea, March 2027.